Wimbledon 2004

1st round / 2nd round / 3rd round / 4th round /

quarter final /

R. Federer interview


You can't look too far ahead

Monday, June 21, 2004
1st round
Hewitt def. Jurgen Melzer, 6-2, 6-4, 6-2



上出来のスタートだったね。

「ああ、いい感じだった。第1セットの最初からすごく調子よくて。第2セットはちょっとたいへんだったけど、それでも彼よりいいプレーができてると思った。ブレイクのチャンスもたくさんあったし。彼は大事なところでいいポイントを重ねてきたけど、4−4のところでちょっと雑なゲームをしたね。セット2−0になって、そこから彼が挽回するのは難しかっただろうと思うよ」


今日いちばんよかったのはどんなところ?

「雨が降る前に終わったことかな。へへ。まあ今日はよくボールが打てたし、よく動けた。 いつものことだけど、大会の最初はコートが滑りやすい。滑って転んじゃうことも多くてさ。そういう状態に彼よりうまく対処できたんじゃないかな」

「もちろんストレートで勝てたこともね。彼は厳しい相手だから。ここで何勝してもおかしくなかったと思うよ。彼のゲームには大いに敬意を払ってる。だから今日、無事に勝てて嬉しいよ」


去年ディフェンディングチャンピオンとして登場したときより今年はプレッシャーが少なかった?

「うーん、メディアや世間はそう見るかもしれないけどさ、僕自身はやっぱり自分に高い期待をかけてるよ。ここでどれだけやれるか、いまどれだけボールを打てるかに」

「もちろん自分に余計なプレッシャーをかけてはいないけど、それは去年、第1シードで戻ってきたときも同じ。いまの自分のゲームには自信をもってる。とにかく一試合ずつ進んでいくだけ。それで今日のような調子が続けば言うことないね」


ところどころで彼はすごく苛立って、ボールを屋根に打ち上げたりラケットを投げたりトイレに行ったりしてたけど、相手のそうした動揺を見るのは心強かったんじゃない?

「そうだね、彼は多少コートで感情を見せるタイプなんだと思うよ。たとえばボールがへんなバウンドをしたりすることもあるけど、そういう状況に対処できるようにするのは当然なわけで。彼が苛立ってたのは――何回かレットがコールされなかったとか、ミスジャッジがあったとか、そういうことじゃないの」

「だけど僕にとってはすごくいい流れになってたから、3セットのあいだ、とくに何も変える必要はなかったね」


試合前に昨年の敗戦のことは頭にあった?

「少しはね、あったと思う。だけど、いい面もあるのさ。守るポイントが1ポイントしかないんだから、ランキングがどーんと下がる心配はしなくてすんだよ」


みんな「一試合ずつ」って言うけど、一週間後のことをどれぐらい考えてる?

「いや、まったく考えてないよ。2002年の結果と、そのあと2003年の結果を見てみれば明白だろ。あれがいい例だよ。自分がどうなるかなんて絶対わからない。ここには強い選手がたくさんいる。誰に当たりの日が来たっておかしくない。とくに芝ではサーブがものを言うから、余計そうだと思うよ。1セットのうちのたった1ポイントか2ポイントで試合の流れが変わっちゃうこともある。それが去年のカルロビッチ戦だった。だからいまは次の試合だけに集中してる」


次の相手となる2人については何か知ってる?

「ラバーゼとは対戦したことないけど、彼も左利きだね。ちょっとメルツァーに似てるかな。すごく派手だもんね。たぶんフォアハンドがもうちょっとフラットで、もうちょっとパワフルなゲームをするんじゃない。彼の芝での成績は知らないけど」

「ブリーゲンとはベルギーでけっこう打ち合ったことがある。とても才能あるプレイヤーだ。もっといい成績を出しててもおかしくないのに。2年前にはアデレードで予選を勝ち上がってファイナルに進出してんだよ。それからは目立った成績がないけど、彼はいいゲームをする。芝にも向いてると思うし」

「まあ、2人ともビッグヒッターだよね。僕は自分のゲームができるかどうか、それだけ考えて、試合の序盤で様子を見るよ」


今日は最高のスタートだった?

「うん――まあ勝てればいつだって最高だけど。とくにストレートならね。今日の調子には満足してる。自信をもって2回戦に進めるよ」


君は下馬評では優勝候補3人か4人のひとりとされてるけど、君もそう思う?

「そりゃ、いつでも誰にでも勝てると思ってるけど、強い選手がたくさんいるからね。ファイナルに出たりトロフィーを掲げたりするのはずっと先の話さ」

「だからみんな言うんだよ、とにかく一試合ずつって。だけどそれは本当さ。先のことなんか考えるべきじゃない。実際に優勝する力のある選手が何人いるか知らないけど、そのあいだに番狂わせを起こせる選手はいくらでもいるんだ」


ゲイリー・エアーズ(*)のこと、どう思う?(*訳注:アデレード・クロウズの監督、この日クビになったらしい)

「今朝、試合前に見たよ。詳しいことは知らないから、何とも言えないなあ」


原文

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I'd just like to win.

Thursday, June 24, 2004
2nd round
Hewitt def. Irakli Labadze, 6-4, 6-4, 6-1


ゴランが実に感動的な5セットマッチを勝ち抜けたところだけど、次の彼との対戦についてはどう? 2年前の彼とパトリックとの試合はどこで見た?

「これまた楽じゃないね。3回続けて左利きが相手だ。彼は前の2人よりも厳しい相手になるだろうし」

「彼はこの大会のためにベストの状態をとっておいたんじゃないかって思うよ。今回は彼にとって最後のウィンブルドンだし、ここに自分のすべてを投入するだろう」

「彼はとてもいいプレーをしてた。試合を少し見たけど、ボランドリはベースラインからすごくいいプレーをしてたよ。だから明日はギアを一段上げなきゃならないだろう。うまくいくことを願うよ」


あのすばらしいサーブは誰もが知ってる。これまでの2試合は助けになるだろうか?

「なると思う。少なくとも左利きの選手と対戦したわけだから。ゴランの前に2人とやれたのは運がよかった。少なくともリターンの面でいえば、レフティのサーブに慣れられたのでね。もちろんゴランのほうがいいサーバーだけど、いまのところうまくリターンできてる感触がある。だから、できるだけボールを返してラリーにもちこみたい」


芝で彼と対戦したことはある?

「芝で2回やったはず。2回とも勝った」


彼とパトリックとの決勝は見た? そのときどこにいて、どう思った?

「えーと、どこか外国にいて、テレビで見た。複雑だったね。試合の大半はパットのほうがいいプレーをしてると思ったからさ。パットのほうが安定した戦いをしてて、ゴランを上回ってた。だから何ていうか――彼がゴランをブレークするチャンスのほうが、ゴランがパットをブレークするチャンスより多かったと思うんだ」

「だけど結局、ゴランがすばらしいゲームをやってブレークした。そのあとパットにもブレークバックのチャンスがあった。見ててたいへんな試合だったよ、ほんとに」


パトリックに対して何か思うところはあった?

「そりゃもちろん。パットのことは昔から知ってるし、彼を見て育ったようなもんだから。彼がどんなにこのタイトルをほしがってたかも知ってたと思うしね。その前の年も彼は決勝でピートに負けてたんだ」

「だから、試合のあいだずっと見ててつらかった」


ゴランはここで非常に人気がある。君との試合でも圧倒的な応援をもらうと思うが、それこそ君の好きな状況だろうか?

「それはべつに気にならない。出ていって自分のゲームに集中するだけ。できれば観客がすばらしいといいね。ロンドンにはオーストラリア人の応援団もたくさんいるしさ。これまでもロンドンでの試合はいつだってすばらしかったよ」


大勢の観客が騒いだり、大半が敵の応援をするような状況が好きなの?

「ふふっ、べつにかまわないよ」


この2試合でまだ1度もサービスを落としてないし、今日の序盤もサーブが非常によかった。これは自信になってる?

「ああ、今日はサーブがよかった。とくに序盤で。いい兆候だ。今日は2回ブレークポイントを取られたし、1回戦でもメルツァーに何回か取られたけど、大事なところでいいサーブが打てたから追いつけた」

「最初の2セット、というか2セット目の途中まで、サーブのリズムがすごく調子よかった。それほど強く打たなくてもコーナーを突いたサーブがすごくよく入った。パワーよりプレースメントで決まったね」

「第3セットはちょっと調子が落ちたけど、それでも6−1で勝てたから」


ああいう一発決めてはミスするタイプの選手はやりにくい?

「うん、彼は波が激しいよね。第一セットは6−0でもおかしくなかったぐらいだけど、彼はいいサーブでたくさんブレークポイントを切り抜けた。ダウンザラインの強烈なフォアハンドもあったし。だけどチャンスはずいぶんもらった」

「第2セットは、彼にとっては今日いちばんの出来だったんじゃないかな」

「その第2セットを僕が取ったところで、試合の主導権を握ったと思う」


いまの調子はとてもよさそうだし、とくにフットワークがすばらしいように見えるけど、そこを集中的に訓練したんだろうか、それとも自然にそうなってるの?

「特別なことは何もしてないよ。たいていいつもフットワークはいいんじゃないかな」

「むしろ、いまはボールがよく打ててる感じかな」


もっと気温が高くなってほしい? 芝が乾いてサーフェスが速くなるから。

「大会が進むほどコートは硬くなる。今日だって第一コートでの最初の試合より硬かった。あのときはまだ青々としてたからね。かなりスローだった」

「僕としてはもう少し速いほうがいいけど、いずれ芝が短くなってそうなるから。ところどころに土も見えてくるし。だんだん剥げていくよ、今週末から来週にかけて」


ゴランのサーブはどこがすごいの?

「いろんな種類があるところ。ウェイン・アーサーズとか、いい左利きの選手がもってるサーブを全部もってる。だけど、それだけじゃない。彼はサーブをいいグランドストロークで補強できる。あんまり評価されてないけど、彼のサービスリターンとグランドストロークはすばらしいよ」

「だからベースラインからでもいいプレーができる」


この2年で2試合しか勝ってない選手がウィンブルドンでここまで勝ち進んでるってことは、かなり驚きだろうか?

「まあね。先々週に彼のプレーを見たけど、クイーンズの1回戦でハネスクに負けてるんだよね。だけど芝だし、ウィンブルドンだし、この一年間にやってきたよりずっといいプレーをしはじめてるんじゃないかな」

「彼には失うものがない。ただ戦うだけ。幸い、彼のゲームは芝のコートにとても適してる。だから試合になれば、あのサーブでたくさん楽なポイントを取れる。相手のサーブで何回かいいゲームをすればいいだけだ。そうやって彼はセットを取ってきてる」


今日11回のブレークチャンスを10回逃したことを考えれば、ブレークポイントを確実に取ることが必須になる?

「ああ。ああいう選手が相手のときは確実にチャンスをものにしなくちゃならない。フリップとか、前だったらピートとか、そういうビッグサーバーが相手のときはブレークチャンスがなかなか来ない。とくにセカンドサーブのときとか、チャンスが来たら確実に取らなきゃいけない」


いまの調子はどう?

「いいよ。だけど先のことはわからない」


彼の体調は万全ではなさそうで、長い試合の終盤になると息切れして荒くなってくる。試合の序盤でもつれた場合は、それが頭に浮かぶだろうか?

「いや、それはないと思う。ここは芝だから、彼はサーブでたくさん楽なポイントを取れる。長いラリーにはならないだろう。一発で決めるかミスするかの試合になると思う。彼はサーブのあとネットに出てくるだろうし。僕としては、彼に難しいボレーをやらせなきゃならない。できればパスでも何本か抜きたいけど」


彼と対戦するときはロブも重要になる? それとも彼は背が高すぎるかな?

「もちろんネットに出てくる相手にはロブが重要になる。それだけプレーの幅が広くなるわけだから。僕もロブは下手なほうじゃないと思うから、それなりに自信もある。もしすべてがうまくいって、パスも抜けてロブも上げられれば、彼もそう簡単にはネットに出てこられない。多少は後ろで構えざるを得なくなる」


自分のクオーターにこれだけ多くの一流選手がいるグランドスラムは経験ある? 今回、君のクオーターにはモヤ、フェデラー、ヨハンソン、イバニセビッチと、優勝できそうな選手が4、5人いるわけだけど。

「うーん、そんな先のことは本当に考えてないんだよ。いま考えてるのはゴランのことだけ。だけど、ドローにはいつだって厳しい相手がたくさんいると思うよ。次にゴランに勝ったって、そうなるとベスト16で、そこまで行けばもう楽な試合はない。シードの高い、最高に強い選手たちがやってくる。4回戦から先はすべて厳しい試合だよ」


戦略的に、ゴランとの試合はどう進ませたい?

「勝ちたい、それだけ」


どんな展開を期待する?

「やってみなきゃわからない」


ウェイン・ケアリー(*)のことといい、クロウズはどうなっちゃってるんだろう?(*訳注:クロウズの主力選手、この日に引退を表明したらしい)

「わかんない。ちょっと締めてやんないといけないかも」


原文

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trying to get out of his way more than anything

Friday, June 25, 2004
3rd round
Hewitt def. Goran Ivanisevic, 6-2, 6-3, 6-4


君にとってはストレート勝利だったけど、ゴランにとってはラストマッチになってしまったね。

「ああ、複雑な気分だよ。センターコートに向かうときからわかってた。もし勝ったとしても、相手はツアーでいちばん愛されてる選手の1人だ。もちろん観客も彼の味方につくだろう。勝ったら彼のキャリアを終わらせることになる。彼にとってウィンブルドンがどんなに大事かもわかってるし」

「だからけっこうきつい立場だけど、今日はそういうことを極力考えないようにできたと思う。ウィンブルドンの2週目に進むチャンスなんだってことだけを考えるようにして。それが今日の最初からの姿勢だった」


最後に握手したとき、お互いに何て言ってたの?

「『今日はやられたよ』みたいなことを彼が言って、僕はただ、『あなたは偉大なチャンピオンだ。このセンターコートであなたと戦えて光栄だった』と」


彼のサーブへのリターンと、自分自身のサーブと、今日はどっちが満足いった?

「いや、どっちもだよ。でも前のラウンドで2人の左利きと対戦したのは間違いなく助けになった。もちろんゴランのサーブのほうがずっといいよ。でも左利き特有の回転の、あの厄介なボディサーブに慣れられたから」

「今日だってチャンスはたくさん来てる感じがした。もっとブレークできててもおかしくないぐらいに。今日はなんだか、試合の最初からボールがよく見えた。自分のサービスゲームをできるだけ楽にキープするのが重要になるってことは最初からわかってたけど、今日はほんとにサーブがよく打ててるって感じた」


現段階では思いどおりの調子に仕上がってる?

「ああ、いまの調子には満足してるよ」


月曜はカルロスとの対戦だけど?

「そりゃ楽になるね(笑)……ってのはもちろん嘘で、また一流のグランドスラマーとの対戦だ。非常に厳しい試合になる。芝は彼の得意なサーフェスじゃないかもしれないけど、デビスカップのファイナルでも初日にマークに勝ってるし。彼は超一流の選手だから、芝にだって対応できるんだ。彼のゲームには大いに敬意を払ってる。だからコートに出たときには、自分のゲームができるようにすることだけを考える。少なくとも試合の序盤はね。いまのところ、そうできるぐらいうまくボールを打ててる感触はある」


対戦成績に表れているように、これまで彼が君に対して分がいいのはなぜなんだろう?

「クレーの試合があったしね。2回か3回、続けて彼とクレーで当たったんだ。あのとき僕はあんまり調子よくなくて、彼のほうはちょうどカムバックしてきたところでさ。最初はモンテカルロの1回戦で、僕は第1シードだったけど、彼のランクはちょっと落ちてた。あの大会で彼は決勝まで行ったはずだ。翌週はローマで、またクレーだった」

「それ以外は別のサーフェスで何度かやったけど、どれも接戦だった。芝では対戦したことないね」


ベースライン付近の地面の状態はどう? 彼は何度か転んでたし、君も一回は滑ってたね。

「うーん、ちょっと滑ったときが1ゲームか2ゲームあったかな。彼のほうが何回か多かったね。だけど、それほど滑りやすいってわけでもないんじゃない。もう青々とはしてないし、とくにベースライン付近は剥げかかってて土が見えてる。でもまあ、それについてはべつに文句ないよ」


2002年と比べて調子はどう?

「どうかな。でも悪くはないと思う。いまのところ、やりたいことはすべてできてる気がする。ただしグランドスラムで勝つにはもう一週あるんでね。でもまあ、来週チャンスを狙えるところまで来られたし」

「とにかく一戦ずつだね。すべての試合を決勝戦のつもりでやらないと。カルロスがどういう戦いをしてくるか楽しみにしてるよ」


このような大会ではとくに奮起するって多くの選手が言うけど、君もそう? たしかにここほどビッグな大会はそうないけど。

「そりゃもちろん、すごく大きな大会だもの。またウィンブルドンに来られて嬉しいし、コートに出るときはいつだってわくわくするよ。一度優勝したことのあるところなら尚更さ。2年前のことは忘れられない。こんな伝統のあるすばらしいコートに戻ってきてプレーできるのは最高だよ」

「出ていくときは鳥肌が立つけど、あそこに立つのは本当に楽しい」


もし優勝したら、アデレード・クロウズのジャンパーを着て見せてくれない?

「ははっ。そうしてほしいんなら、優勝できたときには喜んで着るよ」


観客のことなんかをどうやってシャットアウトするのか、もう少し詳しく教えてくれない? 途中で客席から「We love you, Goran」という声が上がって、雰囲気が急に変わったよね。そういうとき、どうやって集中を保つの? それと、どうやって気持ちを乱されないようにするの?

「うーん、ただできるだけ考えないようにするだけだよ。これまでにも、そうしなきゃならない状況を経験してきた。今日はべつにたいへんじゃなかったよ。観客はすばらしかったし、雰囲気もすばらしかった。観客は僕に敵意をもってたわけじゃないから。楽しんでプレーできた」

「だけど、すごく敵意のあるところでやったこともある。そのときは自分がやらなきゃいけないことにうまく集中できたと思うね。今日もゴランが観客に答えたりして、やりにくかったゲームがあったけど、そういうときでも、できるかぎり集中しなくちゃいけない。ちょっとコートの後ろのほうに行ったりして、時間をとって、何回か深呼吸して、やり過ごす」

「僕はそういう状況に慣れてるだけだと思うよ。第二の天性になっちゃったっていうか」


ゴランの性格とかコート上でのふるまいからして、試合の最後にもう一騒ぎあるんじゃないかと思ってた?

「いや、べつに。それよりブレークしたあとの自分のサーブをキープすることに集中してた」


試合が終わってから、彼のことを見てた?

「うん、見てたよ。僕は彼のほうに、あとからコートを去ってもらいたかった。観客のためにも。だって彼の最後のセンターコートなんだ。観客はみんな、すばらしいチャンピオンだった彼を心から称えてた」

「だから何よりも、彼の邪魔にならないようにって思った」


モヤと芝での初対戦だけど、このサーフェスは勝敗に影響すると思う?

「どうかな。たしかに動きには影響するけど。ボールが滑っていくから、彼もクレーのときほどは時間の余裕がないと思う」

「でも彼は何でもできるプレーヤーだからさ。ボレーもうまいし。あんまり評価されてないけど、彼はネットプレーがうまいよ。すごく動きがいい。それにファーストサーブもひどく過小評価されてる。彼のファーストサーブはすごい。マークはそれで苦労したんだと思う。デビスカップの初日、マークに対して彼はすごくいいサーブを打ってた」

「だから彼のサーブをうまく返してラリーにもちこめれば、相当プレッシャーを与えられるんじゃないかな」


対戦成績で君のほうが負けてる相手ってそういないわけだけど、月曜に向けての準備や心理状態に影響する?

「いや、まったく。今回はグランドスラム、ウィンブルドンだもの。それについては気にならないよ」


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I'm the underdog for sure

Monday, June 28, 2004
4th round
Hewitt def. Carlos Moya, 6-4, 6-2, 4-6, 7-6 (7-3)


去年は初戦で敗退したわけだけど、本当だったら去年もこんなふうに順調に勝ち進んでタイトルを防衛するはずだったのに、という思いはある?

「うん、だけど去年の負けで学んだこともたくさんあったと思う。あの負けによって自分がプレーヤーとして成長したと考えたい。当時はほとんど前向きなことを考えられなかった。でも1年たって戻ってきて――あの記憶はもちろん1回戦のときには頭にあったけど、そこを乗り越えて、やっと本当に払拭できたような気がする」

「だからいまは、次の対戦相手のことだけに集中できてるよ」


君はまた新鮮さを取り戻したようだっていう意見があったんだけど、一時期はそういう感覚が失われていた?

「うーん、何とも言えないけど、2年のあいだに試合をしすぎたかなって感じはある。そこにデビスカップも加わっていたし。シドニーのマスターズカップで1位になって、デビスカップの決勝を戦って、そのあとすぐ水疱瘡にかかった。それはやっぱり、ちょっと消耗することだったのかな、とは思う」

「昨年末のデビスカップの決勝でスペインに勝つために、あの2ヵ月の休みをとることがすごく重要だった。いきなり出ていって世界のトップ5の選手2人に勝てるのかって心配する声もそれほどなかった」

「僕は自分の能力を信じてた。あそこで休んだおかげで、今年に入ってからもいい結果につながってると思う。ツアーに出ないで、厳しいトレーニングをこなして、毎週毎週の試合続きから少し休みをとったんだ」


水曜にロジャーに勝てる自信はある?

「もちろん勝てると信じてる。めちゃくちゃ厳しい試合になるだろうけど。彼はいま最高のプレーヤーだ。だてに世界1位になってんじゃない。ここまでも圧倒的な強さで勝ち進んできてる」

「だから、そう、勝ち目が薄いのはまちがいなくこっちだよ。だけど僕は自分の能力を信じてるし、前にも彼といい試合をやってる」


今回は前の2試合とサーフェスが違うけど、何か明らかに違う対処が必要だという点があるだろうか?

「さあ、わからない。全豪でもチャンスはたくさんあった。第2セットの途中までは明らかに僕のほうが押してる感じがあった。だから簡単に1セットアップ、1ブレークアップできててもおかしくなかった」

「彼はものすごくいいプレーヤーだ。いったん波に乗って、自信をもって打ちはじめちゃったら、もうなかなか止まらない。それにいつでもウィナーが打てる。だからできるだけいいスタートを切りたい。まあデビスカップの準決勝で2セット取られてブレークされたあとに挽回した例もあるしね」

「いずれにしても、がんばってついていくだけだよ」


自分の力には充分に自信をもっているだろうけど、今回このウィンブルドンという舞台で、ふたたび頂点に戻れる力があることを万人に示したいっていう気持ちはある?

「べつに誰かに何かを証明しようとする気はないよ。ただウィンブルドンで勝とうとしてるだけ。それは何よりも自分のためであって、人がどう考えようとかまわない。試合に出るときは、いまだって自分がいつ誰にでも勝てると思ってる」

「だけどもちろん、出ていってすべての試合に勝つなんてそう簡単なことじゃないからさ」


昨年から、というかウィンブルドンで優勝してから、グランドスラムでそれほど上位に進出していないこともあって、君はいろいろと批判を受けてきたけれど、そういうことにどうやって対処しているの?

「どの大会でも同じだけど、試合に出るときはつねに100%を出してる。それで力が足りなければ、力が足りないってことだ」

「いま振り返っても、試合中にできることはすべてやったと言える。試合前の準備についてもそうだし、グランドスラムでもどの大会でも同じ。ここ2年のグランドスラムで僕が負けた相手を見ても、みんな並の選手じゃなかった。今年はフェデラーとガウディオだ。QFで負けた。去年のフェレーロは、その翌日にアガシを破った。そのときすごく調子のよかった選手に、競った試合で負けてんだ」


あのデビスカップでのロジャーへの勝利はどのぐらい励みになりそう?

「たいしてならないと思うね。あれから2回も彼とやって、2回とも彼が勝ってる。それになんたって彼は全豪の4回戦で僕に勝ったんだし。今回はまったく違ったサーフェスだから、全豪を参考にするんだったら、むしろ同じコートでのデビスカップでの対戦を参考にしたいね」


2セット失ったあと、先にブレークされてから逆転したってことは強みにならない?

「そういう状況にはなりたくない。それは僕のゲームプランじゃない(笑)」


カルロスが別の日に言っていたんだが、彼は今日の試合をデビスカップの決勝で行なわれなかった試合の代わりにしたかったんだそうだ。あの日の最終戦で君と戦いたかったから、今回ここに来たかったんだと。彼はまさにそのような、すべてを賭けてプレーしているようなときがあったけど、君もいくらかそう感じた? 誰かがそんなことを言っているのを聞いたらどう思う? さらに闘志が燃える?

「いや、というか、彼がそんなことを言ったなんてまったく知らなかった。でも僕のほうも、デビスカップ決勝の最終戦と同じようなつもりで試合に臨んでたよ。今日は本当に集中してた」

「メルボルンの初日の金曜日に彼がフリップと対戦したのを見たけれど、本当にすばらしいプレーをしてた。芝のコートにもすごく簡単に対応できるプレーヤーだと思うね。なにしろあれだけの破壊力があるから。だからサーブの調子がよければ、簡単にサービスゲームをキープしてしまう。すごくいい選手だから、ブレークのチャンスだってセットのうちに何度でも握るだろう」

「でも大きな試合となればね。僕のほうも、やっぱりウィンブルドンとなればさ」


君は今大会の第1シードにも第2シードにも対戦成績で勝ってるけれど、ロジャーとアンディをそれぞれどう評価する? 彼らを破るカギはなんだろう?

「うーん、ロジャーのほうが技巧派っていうかな。彼のショットは本当に正確だ。アンディはやっぱりパワーでしょ。彼のパワーは信じられないぐらいすごいよ。あのサーブとフォアハンドが彼のいちばんの強みだね。ロジャーはもっとオールコートプレーヤーって感じかな」

「まあ、どっちも簡単には破れないよ」


じゃあカギは?

「知らない。知ってたって教えないけど(笑)」


どうして芝はロジャーのゲームにこれほど合ってるんだと思う?

「彼はオールコートプレーヤーだ。ほんとに何でもできて――サーブ&ボレーも混ぜるし、ステイバックもするし、グラウンドストロークは強力だし、動きもすごくいい。体もとりわけ大きくはないけど、小さくはない。ほんとに動きがいいんだよね」


アンディの芝でのゲームは昨年から進歩してると思う?

「うーん、去年は彼の芝でのプレーを見てないんでね。もちろん先々週はクイーンズで対戦したけどさ。まあ、彼は典型的なグラスコートプレーヤーってわけじゃない。どちらかといえばロジャーのほうが典型的なグラスコートプレーヤーだ。アンディの強みはやっぱりあのビッグサーブだし、彼はたいていステイバックしてるだろ。ロジャーはアンディよりずっと多くネットに出てくる。ロジャーが去年の準決勝で勝ったのは、そこが大きかったんじゃないかな」


今日は疲れる試合だったんじゃない?

「いや、大丈夫だったよ。あと何日かは体力もつよ」


ロジャーが今大会でサーブを落としてないのは驚き? 彼は時速220キロのサーブを打つわけじゃない。それでいてサーブを落とさずにここまで勝ち上がってくるのは意外じゃないか?

「そんなことないよ。彼はすごいサーブをもってる。すごくリズムがある。とても少ない労力でとてもパワフルなサーブが打てる。彼の場合は何よりもプレースメントなんだ。パワーで押し切るんじゃなくて、ポイントを組み立てていくための有効なサーブなんだよね」


昨年と一昨年のチャンピオン対決になるが、君もロジャーもまだ若い。この先、君たちはすばらしいライバル関係になると思う?

「さあ。そうなれればいいけど。まあ、この準々決勝が始まりってことで、あとはどうなるか」


次の試合は今大会の最大の山場になりそう?

「ああ。彼はいま最高にのってる。その彼に勝てれば、すごく自信がつくだろう」


モヤに勝ったいま、自信はどれぐらいある? 今日の彼は非常に調子がよかったようだから。

「ああ、何度も言ってるけど、彼はほんとに一流のプレーヤーだ。どのサーフェスだろうと、グランドスラムの5セットマッチで彼に勝つのは難しい。他の対戦を見てみてもさ、たぶん彼がいちばん厳しいシード選手だったんじゃないかと思うよ。4回戦でこんな高いランクの選手に当たっちゃうなんてさ。でも4回戦で彼と当たっちゃったんだから、がんばって何とかするしかなかった。だからほんと、通過できて自信がついたよ」


今年のドロー運についてはいささか思うところがある? 君が前に引いた2人の相手は優勝まで行っちゃって、早くに引きすぎてしまったようだけど。

「うん? どういうこと?」


大会の優勝者と早くに当たっちゃってるってこと。

「ああ、それについてはどうしようもないもの」


その面ではあまり運がなかったかな。

「だけど、どっちもそんなに差があったとは思ってないよ。全豪ではロジャーを大会の中でもかなり苦しめたほうじゃないかと思うしね。ま、あの大会ではロジャーが最高のプレーヤーだったし、実際に優勝した。だけど僕が別のハーフにいたら決勝まで進めていたかってなると、それはわかんないよ」


原文

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Then you're in the locker room

Wednesday, June 30, 2004
quarter final
Hewitt defeated by Roger Federer, 1-6, 7-6 (7-1), 0-6, 4-6


いろいろ思うところはあるだろうけど、いまの率直な気持ちは?

「残念だ。負け試合の直後じゃそれしか言えない。第4セットにはチャンスがあったと思う。あのセットはずっと僕のほうがいいプレーをしてた。だけど結果に結びつけられなかった」

「一瞬は先にブレークしてた。4−4でもブレークポイントを取った。そこで2本すごいサーブが来て逃げられた。5−4のときもそんなに悪いゲームをしたつもりはない。ただ彼のほうが少し攻撃的に、狙ったショットを打ってきて、それが決まった。そして気がついたらロッカールームにいる」

「このウィンブルドンで――負けたときはいつでも残念だ」


今日は自分のベストを出したと思う? それともちょっと不調だった?

「もちろん、もってるものはすべて出した。いい試合をしてると思ってた。第1セットだって、そんなに調子が悪いとは思わなかった。ただ彼が信じられないようなテニスをした。チャンスはたくさんあった。ブレークポイントも握った」

「あの第1セットでも僕のほうが先にブレークポイントを握った。でもリターンをミスして、それを活かせなかった。それから彼が自信をもちはじめて、そうなってしまうと彼を破るのはものすごく難しい」


実際のゲームはスコアよりずっと競っていたように見えたけれど、それについてはどう思う?

「うん、たしかに――たしかに厳しい試合だった。第3セットの初めだって、タイブレークを取った直後で、あの第3セットの第1ゲームで少なくとも2回はブレークポイントを握ったはずだ。あの段階では、流れはこっちに傾きはじめてると思ってた。ただそこで、ちょっと雑なゲームをしてしまった」

「でも、そこで彼がレベルを上げたのも事実だ。彼を褒めるしかない。彼はいま世界最高のプレーヤーだ。第2ゲームで彼がレベルを上げた。第3セットの第2ゲームで彼にブレークされたけど、あのブレークポイントのときだって、僕はいいプレーをしてた。どれだけ長く続いてたかわからないけど、最後に彼が信じられないようなバックハンドのダウンザラインを打って、やっとポイントが決まったんだ」

「だから、そう、僕はよくやってたよ」


たとえベストではないにしろ、久しぶりにベストに近い状態でプレーできたことに多少の満足はある?

「うーん、いまはやっぱり、たいして満足は感じられない。だけど自分の調子にはぜんぜん文句はない。ずっと厳しい練習を積んできたし、今年のこれまでのメジャー3つと、それから年初のデビスカップに焦点をあわせてきて、その準備はとてもうまくいったと思う」

「これまでの3つのメジャーでは、できるだけの準備をしたと思う。それで結局、そのうちの2つではロジャーに負けて、もう1つではガウディオに負けた。どれも相手がよすぎた」


あの2セット、君はいいプレーをしていたのに6−1、6−0だったということは、それだけロジャーと他の選手との差が大きいのだろうか?

「ていうか、こっちもそんなにすごいプレーをしてたわけじゃないから。とくに第3セットの途中はいちばん出来が悪かったんじゃないかな。もちろん彼がすごく自信をもってやってるってのもあるけど。ほんとにすごいショットを打つからさ。個人的には、今日の彼のベストは第3セットじゃなくて第1セットだったと思う。なんていうか、最初っからすごい飛ばしてた」


彼は他の誰よりも抜けている?

「さあ、それは何とも言えない。今日は僕にもたくさんチャンスがあったような気がするけど、彼が第1セットでやったようなテニスをされちゃあ、勝つのはすごく難しい。彼にはボールがすごくよく見えてた。リターンが前よりずっとよくなってる。2、3年前はよくアンフォーストエラーをしてたけど、それがほんとに減った」

「だけど5セットマッチでは、かならずところどころでチャンスが来る。今日もそういうチャンスがあったと思うし、いくつかはものにできた。だけどそれ以外は、彼がうまく切り抜けた。ブレークポイントでビッグサーブを打たれちゃ、もうどうしようもなかった」


君は非常にいいプレーをしたのに、それでも負けてしまったということは、落胆や悔しさを倍増させる?

「グランドスラムで負けたときはいつだってがっかりだよ。とくにウィンブルドンでは。だけど、うん、たしかにチャンスが何度かあったのに活かせなかったのだから、そうかもしれない。世界のトップクラスの選手、とくに現時点で世界最高の選手と対戦するときには、そういうチャンスを逃しちゃダメなんだ」


君は絶対に試合をあきらめないことで知られていて、ツアーの中でも有数のファイターとされている。ロジャーの才能についてはさんざん言われているけど、競ったときの闘志という点ではどうだろう? 苦しい状況に追いこまれたときも彼はうまく切り抜けた。この点で、君は彼をどう評価する?

「もちろん、すばらしいファイターだよ。2年前よりずっとよくなってると思う。全力を尽くして戦ってる。彼が自分から崩れることなんてめったにない。だから――つまり彼がこの2年でがんばったのって、そこの部分じゃないの。だからいま、こんなにすばらしい選手になったんじゃないかと思うけど」


ウィンブルドンで彼を破るにはどうしたらいいだろう?

「彼を破る?」


そう、ウィンブルドンで彼に勝つにはどうしたらいい?

「こんなことを言ってもしょうがないけど、今日そんなに差があったような感じはしなかった。いま考えてもチャンスはあった。さっき言ったように第3セットの第1ゲーム、あそこで大きく流れが変わりそうだった。第2セットのタイブレークを7−1で取ったあとだったから。それから第4セット、5−3にしてブレークをしっかり守れていたら、第4セットを取って、流れを自分に傾けたところで第5セットに入れていたかもしれない」

「まあ、彼を芝で破るのは本当に難しいだろうね。彼はあとの2試合もまちがいなく本命だ。だけど不可能ではないと思うよ」


君と対戦する場合、ストレート勝利では終わらないことを彼もわかってると思う? つまり決して簡単には終わらなくて、流れがところどころで変わって、もし最終セットにもちこまれたら、どんなに優勢に2セットを取っていても、5セット目に入ったらつねに君に負かされる可能性があるってことを、彼は意識していると思う? というのも、今日も彼が自信を失っているように見えたときが何度かあったので。

「たしかに今日の彼はちょっと波があったね。彼が意識してるのかどうかは知らないけど、まあ、僕があきらめないってことは頭のどこかに置いといてると思うよ。彼が簡単に勝てないようにできるかぎりのことはするからね」

「1ヵ月ほど前にハンブルクで対戦したとき、彼はそれこそ信じられないようなテニスで勝ったけど、あれは3セットマッチだったから。5セットマッチなら、かならずどこかでチャンスが来る。問題はそれをつかめるかどうかってことだけで」


彼は今回のウィンブルドンであまりサーブ&ボレーをしてないんだが、それは意外だった? 彼を前におびき出そうとした?

「いや、それはない。彼が実際にどの程度やってるのか知らないし、去年の試合もほとんど見てないから、どれだけサーブ&ボレーをしてたのか知らないけど、彼はロディックのような超パワフルなサーブをもってるわけじゃないからね。彼はサーブでポイントを組み立てて、得意のフォアハンドが打てるようにもっていく」

「彼は非常に多彩な手をもってる。もちろんサーブ&ボレーもできる。そこが彼のすごいところだ。ほんとにいろんなことができるんだよ」


ロディックのセカンドサーブは、テニス界最高とは言わなくても、トップクラスではあると思う?

「ああ、もちろん。あんなに強くセカンドサーブを叩くのに、ほとんどダブルフォルトをしない。とくに大事なポイントで。彼がツアーに出はじめたころは、あのセカンドサーブでもっとダブルフォルトをしていたと思う。あれだけ強く叩いているわりには非常に安定したセカンドサーブだよ」


降雨中断は自分にとって、相手にとって、また試合の流れにとって、どんな影響があったと思う?

「最初の中断のときはウォームアップしかしてなかったから、まあ誰にも影響なかったね(笑)。そのあとは座ってリラックスしてるだけ。あんまり気にしすぎないようにして。ああいうときはけっこう難しいんだよ。テレビでカバーが外されたのを見て、さあ行くぞって気になったら、またすぐ戻されちゃうんだから」

「ともかく、できるだけ気を緩ませないようにしてた。カバーが外されたら10分後には出て行かなきゃいけないんだ。集中を保って、いつでも出られるようにして、リラックスしすぎないようにする」


第2セットで再開されたとき、相手は自分ほど調子が出ていないように感じた? 彼は6−1のセットのときほど調子よくなさそうだったけど。

「ああ、あの第1セットはすごかったからね。だけど前も言ったように、ああいう調子をキープするのはすごくたいへんだよ。とくに芝では、へんなバウンドをすることも多いから。僕はとにかく彼にたくさんボールを打たせるようにしてた」

「あの第1セットの調子を最初から最後までふつうに通せちゃうんだったら、それこそ彼はすごいプレーヤーだよ」


今年の残りの目標は?

「あとはやっぱり、全米オープン。今年最後のメジャーだから。フラッシングメドウではいい試合をしてると思うんだ。あそこでは毎年いいプレーができるみたい。前に優勝したことのあるところに行くのは、やっぱり気分がいいよ」

「だけど、そっちも簡単にはいかない。いいプレーヤーがたくさんいるから。とくにハードコートでは」


オリンピックについては考え直してない?

「ない」


家で見ていたら出たくなるんじゃない?

「いや、そのときはアメリカにいて全米の準備をしてるから」


今日は観客の応援では君が勝ってた。イギリスの観客の大半が自分を応援してたというのはヘンな感じ?

「ていうか、オージーもたくさんいたからじゃないの」


いや、イギリス人の応援もたくさんあったよ。まさしく君を応援していたように見えた。

「ふうん、そりゃ嬉しいね。こういうときはたいへんだろうね。ロジャーと僕はどっちも前にここで優勝してるし。たぶん観客にとっては、もっと見ていたいってのがいちばんにあったんじゃないかな。とくに第4セットでは、ずいぶん応援してもらったと思うよ。できれば僕にもうちょっと粘ってもらいたかっただろうからさ」


太腿の故障はどれぐらい悪いの?

「かなり痛い」


試合前は大丈夫だったの?

「一昨日のモヤ戦で傷めたんだ。この2日間はつらかった。昨日は思うように練習もできなかったし。今日はその影響がたしかにあった」


それがサーブに影響した?

「ああ、サーブがいちばんひどかった」


そこがいちばん痛手だった?

「うん、試合が進むほどひどくなった」


フェデラーは2つや3つどころか、これからいくつもグランドスラムをとれる選手だってやたらと騒がれはじめてるけど、それはもっともだと思う? それともメディアはそういう大スターを必要としてるからって、まだ勝ってもいない選手を性急にもちあげすぎだと思う?

「これは僕の個人的な意見だけど、今週、彼を負かせる人間がそう多くいるとは思えない。この日曜に彼が3つめのメジャーをとれなかったら、すごい驚きだね。だから、それでまた1つだろ。この1年で2つめだよね」

「彼はどのサーフェスでもプレーできる。クレーのハンブルクでもそうだった。あの非常に遅いクレーコートは、本来、彼のゲームにはそれほど合ってないはずなんだ。それでもモヤに勝って、決勝でコリアに勝った。彼はすべてのメジャーでチャンスがあると思う」


原文

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Roger Federer interview

Wednesday, June 30, 2004
quarter final
Federer def. Hewitt, 6-1, 6-7 (1-7), 6-0, 6-4


昨日テレビで、話すことが何もないから話したくない試合もあるって言ってたけど、今日はどう?

「今日はさすがに話せることがあるんでね、行きましょう」

「まず、非常に厳しい試合だった。試合前からたいへんになるだろうとは予想してた。たいへんなバトルになって、たくさん走らされるだろうと。第1セットと第3セットだって、実際にはスコアと全然違ってたいへんだった。どちらのセットも早くにブレークポイントを握られていたから、そこでどう転んでいたかわからない」

「それ以外は、自分の出来にとても満足してる。いいスタートが切れたし、第2セットには厄介な状況もあったから。雨で2回か3回中断したけど、ああいうのは決して嬉しくない。それに5オールで再開したとき、彼はちっとも隙がなかった。それで第2セットを取られた。でも、とにかくがんばってついていった。第3セットと第4セットもやはり厳しかった」


デビスカップで2セット先取、1ブレークアップしたあと彼に逆転された例があるけど、そういうことを考えないようにするのは非常に難しい? 彼は試合をあきらめるような選手じゃない。頭のどこかでつい考えてしまって、「さあこれでフィニッシュ」と思えないときがある?

「あのねえ、デビスカップのことは本当にもうたいして気にしてないんだよ。あれから2回も彼とやってる。で、2回とも彼に勝ってる。オーストラリアで対戦したときも、僕のサービングフォーマッチで、彼はやっぱり挽回してきそうになった。ハンブルクでも僕の最後のサービスゲームを彼はブレークした。だけどダブルブレークアップだったし、そのあと彼をブレークして勝った」

「今回は僕が追う立場で、挽回して最初のチャンスをつかんだ。だからそういう恐ろしい状況に立たされることにはならなかったしね」


今夜のうちに試合を終わらせて、明日1日休めるようにするのはどれぐらい重要だった?

「日没とか雨とか、そういうことはたいして気にしてなかった。ただ勝ちたいと思っていただけで。もし明日に持ち越されたって、それはそれでかまわない。僕が思っていたのは、彼に勝ちたい、敗者で終わりたくないってことだけだったから」


彼は2年前にここで優勝してる。今日も彼はいいプレーをしたが、君がすばらしすぎた。いまの彼を2年前と比べてどう評価する? ベストの状態に戻っていると思う?

「今日の試合はまちがいなく、非常にレベルの高いものだったと思う。残念なのは僕たちがQFの段階で当たってしまったことだ。彼はクイーンズでアンディに負けた。で、今週は僕。この芝のシーズンは、彼にとっては受け入れがたいものだと思うよ」

「だけど、もうずいぶん前から彼は本来のところに戻ってきてると感じてた。トップ5やトップ3じゃなくても、少なくともトップ10にはいるだろ。ただ彼は昨年の終わりにあんまり大会に出なかったからさ。本当にデビスカップに集中してた。今日だってどんなに強いか示したし。だから、彼のランキングが落ちたからって関係ないよ。いつだってファイターだよ」


ということは、彼はドローで当たりたくない選手かな?

「もちろん別の山にいてもらいたいよ。そうすれば別の選手とやってくれるから。だけど彼との対戦はいつも楽しみにしてる。ジュニアで最初に対戦したのが、お互い16歳のときで、マッチポイントを握られたけど僕が勝ったんだ。スイスでの試合だった。いまでも覚えてるけど、あっちのチェアにはダレンがいて、こっちにはスイスのコーチがいてさ。あのときから、僕たち本当に最初っからいい試合をやってるんだ」

「初めはほとんど彼のほうが勝っていた。どれも非常に競った試合だったから。それから、ここ3回は僕が勝っているのでね、とても嬉しいよ」


今日はエースが18本。こういう敏捷な選手が相手だったことを考えれば、今大会で最高のサービスだったんじゃないだろうか。

「うん、でもサーブだけじゃレイトンには対抗できない。彼はたくさんボールを返してくるから。カルロビッチなんかだと全然違った試合になる。あのときはゲームで先行することが重要だった。そうすれば攻撃的になれて、彼のほうも少し集中が落ちる」

「だけど相手がレイトンだと、30−0でも安心できない。今日は本当にサーブで狙っていかなきゃならないって感じた。実際にエースが取れるように、ものすごく強打しなければならなかった。幸い、大事なところでいいサーブが打てた。今日はそれで助かったと思う」


自分のサーブの調子を測るためにはどのスタッツを見るの? エースの数は重要?

「うーん、エースの数はひとつの数字でしかないよ。必ずしも真実を映してるとはいえない。大事なのはファーストサーブでのポイント率じゃないかな。その部分で彼のファーストサーブの率と比べると、明らかに彼よりよかった。そこでたくさん楽なポイントが取れた。だからリターンゲームでも多くチャンスがつかめたわけだし」


君がジャーナリストだったらマリオ・アンチッチという選手をどう評価する?

「彼はこれからの選手だね。彼とは前にセンターコートでやって負けたんだ。だから、彼がやっと活躍してきてくれて嬉しいよ。なかなかブレークしなかったから、ちょっと残念だったんだよね。でも今日はすばらしかった」

「彼にチャンスはあると思ってたけど、ヘンマンにストレートで勝ったのにはさすがに驚いたよ」


第3セットのタイブレークの2ポイント目だけど、あの最初のエラーはどれぐらい影響した? どうしてああなっちゃったの?

「タイブレーク?」

そう。2ポイント目でのショットがベースラインを越えたでしょ。

「ああ、あのフォアハンド、強すぎで長すぎだった(笑)。まあタイブレークに入ったときからすでにプレッシャーは感じてたんだ。彼のほうがいいプレーをしていたので。あのセットは7−5で取られていてもおかしくなかった。ただサーブがよかったんで、もう1ゲームしのげたけど」

「あのときはバックハンド側に打ちたかったんだ。そうしたら彼は動けないだろうと思って。で、『ただバックに返しただけじゃまずいだろう』と思って、それで強く打ちすぎた。あれで彼は残りのプレー、すごく自信をつけちゃったね」

「だけど太陽が向こう側にあって、それもやりにくかったんだよね。それまでは太陽が目に入ることなかったから。でも第2セットの終わりは彼のほうがいいプレーをしてたのもたしかだから、あれを取ったのは彼の力だよ」


雨は彼に味方したと思う? 第1セットは君が押しまくってたでしょ。あの中断は君にとってより、彼にとって助けになったと思った? それから再開後に調子を戻すのにも時間がかかった?

「どうだろう。5オールまでは完全にイーブンだと思ってた。で、再開して、彼がとくに何かを変えたとは思わないけど、僕はそれまでのようなレベルでプレーができなかった。とくにベースラインからの調子が充分でなかった。長いバックハンドのクロスラリーに入ったときも、彼のほうが安定してた。それでちょっと自信が途切れた」

「彼のほうは本当に入りがよくて。僕にダウンザラインのフォアハンドウィナーを打たせず、自分でそれをやってた。そこで流れががらっと変わったのを、彼は逃さなかった。だけど大きかったのは、第3セットの初めでうまく対応できたことだ。あそこでまたブレークされそうになったけど運よく切り抜けて、逆に僕がブレークした。そこで流れが僕に戻ってきて、僕もしっかりそれをつかんだ」


次は非常に敏捷な、非常にクレバーな若いフランス人が相手だけど、彼にはどう対処する?

「いや、本当に楽しみにしてるよ。僕たち2回ぐらいしか対戦したことがないので。1回だけだったかな? 3回?」


3回。

「たしかシドニーで3セットで負けたんだ。あとはどこでやったっけ? 覚えてないや」

「本当はデビスカップで2回は対戦するはずだったんだけど、彼が故障しちゃってね。だから楽しみ。彼はすごく順調に勝ち進んできてるね。おっしゃるとおり、とてもやりにくい相手だ。リターンがいい。ファーストサーブもすごくいいし、動きもいい。それだけ合わさったら危険だよ。彼には武器がたくさんある」

「前回もここまで勝ち進んでるし、芝のノッティンガムでも優勝している。芝でのプレーを熟知してるから、厳しい試合になるだろうね」


レイトンが言っていたけど、競り負けないということが、君がここ2年ほどで完全に埋めた穴の一つじゃないかと。つまり以前には試合の途中で崩れてしまうようなこともあったけど、メンタル面で本当に強くなったと。それは意識的にやったことなんだろうか、それとも単に経験と時間の問題?

「うーん、実際はいろんなことが絡んでるからねえ。だけどレイトンの言うことは、僕も同じように感じてる。以前は、そう、たとえば2000年にデビスカップの試合で彼と対戦したとき、1セットオールで、第3セットを彼がタイブレークで取ったあと、僕は第4セット6−1で負けたんだ。そういう試合をしょっちゅうやってたわけじゃないんだよ。ただ彼がすごく強いのは知ってたから、それから挽回するのはとても難しいってわかってた。それで自分のゲームをがらっと変えたら、逆効果だった」

「それからたくさん経験を積んだ。いまの僕はもっと自信があるし、調整の面でもメンタルの面でも、自分にしっかりした基盤があるってわかってる。いまの僕は前の僕とは全然違うんだ。テニスに対する見方も前とはすっかり違う。だからレイトンが言ってることは正しいと思うよ。自分でもそういうふうに感じているから」


このあいだピート・サンプラスがテレビで言っていたんだが、彼がとても落ち着いているように見えるときも実際はひどくナーバスになっていて、ただ誰もそれを知らないだけなんだと。君もそうなのかな? 僕らから見ると君はとても落ち着いていて、非常に穏やかに見えるが、内心はカッカしてるのかな?

「そりゃあブレークポイントのときはいつも脈拍が上がるよ、もちろん。すごく気分がいいときもあるし、ブレークされればカッカする。だけど全体としては、内心も非常に穏やかなほうだろうね。今日も試合前からすでに落ち着いていて、ずっとピリピリしているなんてことはなかった。自分でも驚いたんだけど、雨で中断したあとでも、べつに気にはならなかった。『大丈夫、まだ1オールだ、まだ5オールだ』って感じで。だから非常にナーバスになって困るってことは本当になかったよ。たしかに長いラリー中や、ゲーム中の厳しい局面では脈拍が上がるけれど、いまはそういうものだと思っているから、とくにナーバスになる理由もない」


今日はまるでハードコートのような試合だった。2人ともほとんどベースラインで打ち合ってた。本当はもっと前に行きたかった? それはレイトンを警戒してのこと?

「できれば行きたいけれど、そうしたら負けてたと思う。彼のリターンは非常に安定しているから。彼のパッシングショットは本当にすごい。今日も簡単なボレーをさせてもらった覚えがないよ。どの位置でもね。彼はいつも相手にネットより下でボレーをさせる。なんでそんなことができるのかってぐらいに。彼とやるときはいつも、あまりにもボールが返ってくるんで驚かされる。それもただ返ってくるだけじゃない。たぶん高いところで打っても低く抑えられるんだろうね。それが彼のゲームの秘訣だと思う」

「だからヘンマンが彼に勝てないのもわかるような気がするよ。彼のリターンとパッシングショットはそれだけすごいんだ」


テニスは国際的な、全世界的なスポーツだ。そして君とアンディがこの先何年かトップにいつづけるのはまちがいない。そうするとテニスをプロモートするためには、アンディはもっとヨーロッパで有名になる必要があるし、君はアメリカで有名になる必要がある。ハードコートのシーズン中にジェイ・レノやデビッド・レターマンのショーに出たりすることは考えられる? そういうのを楽しめそう?

「そうだね、僕たちはもっと頻繁に対戦して、安定した、いいプレーをして、お互いに高めあっていかなきゃならないと思う。そういうショーに出るのも考えられなくはないよ。だけど僕の英語はアメリカ人やイギリス人ほどうまくないからさ、質問にうまく答えられないかも。ユーモアセンスなんかとっても出せそうにないね」

「でもまあ、気分転換にどういうもんだか試してみるのも面白いかな、とは思うよ」


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