1999年デビスカップ準決勝

ロシア対オーストラリア

ブリスベーン、オーストラリア


対戦前夜



RUSSIAN KAFELNIKOV PREDICTS 3-1 WIN IN DAVIS CUP
By Wayne Heming
BRISBANE, Sept 22 AAP

ロシアのカフェルニコフ、3−1勝利を予言


 ロシアの「ヘビー級」プレーヤー、エフゲニー・カフェルニコフは、今日もいきなりパンチを繰り出した。ブリスベーンのANZスタジアムに用意されたグラスコートの状態にケチをつけ、デ杯初登場となるウェイン・アーサーズのメンタル面に疑問を呈し、日曜の午後には3−1で勝利が決まっているだろうと断言したのである。

 世界ランク2位の大物選手は、メディア相手のショータイムでボレーとスマッシュを決めるかのごとく、ロシアの勝利を大胆に予言すると同時に1993年以来のオーストラリアの決勝進出をにべもなく否定した。

 ロシア第2位のマラト・サフィンは自分への唯一の質問にぼそぼそと答えると、これでお役御免とばかりに体を後ろへ投げ出して試合のプログラムをぱらぱらとめくりだし、隣のショーマンがロシアの作戦を語るに任せた。カフェルニコフは、今回初めてオーストラリアのデ杯代表となった28歳のアーサーズに自分が勝ち、そのあとティーンエイジャーの相棒サフィン――オーストラリアは彼を狙い目とみなしているが――が同じくティーンエイジャーであるオーストラリアのレイトン・ヒューイットに一泡吹かせ、早くも金曜夜の段階でロシアが2−0のリードを奪っているだろうと断言した。

 カフェルニコフの大口はそこで止まらず、もしもアーサーズとの初戦で手こずらされた場合には、休養のために土曜の重要なダブルスを「捨て試合」にしてもいいとさえ言い放った。そうすれば日曜のシングルスのヒューイット戦でロシアは確実に勝利を決められる、とカフェルニコフは言う。
「金曜にシングルスを2つ勝って、土曜にダブルスで負けて、それから日曜に俺が3勝目をあげる。したがって3−1勝利だ」

 少し自信過剰ではないかという意見に対し、カフェルニコフはその自信の根拠を、チームの能力に確信をもっているからだと説明した。「だからはっきり断言してるんだよ」

 金曜に大きなプレッシャーのもとでデ杯デビューを果たすアーサーズに勝てると思っているかと尋ねられ、金髪のロシア人は「オーイェー、オーイェー」と答えた。そして日曜のヒューイット戦についても、やはり「オーイェー」。
「両方勝つね。だって俺、調子いいもの」と、ロシア・ナンバー1の25歳は言う。
「俺の2勝はまちがいないから、あとはどこで3勝目をあげるかだな」
「俺は初日にマラトがヒューイットに勝つと思うね。その時点でもう3勝目は見えてるさ」

 オーストラリア陣営はサフィンに狙いをつけている。サフィンが芝でのプレーに不安をもっているというのがその理由だ。

 サフィンの性格と194センチのひょろ長い体格は、ベースラインで快適に打ち合っていられずネットに出させられたときに試練にさらされるだろう。しかしカフェルニコフは若いサフィンにかかるプレッシャーを取り除き、逆にアーサーズにプレッシャーをかけるべく、アーサーズのメンタルの強さに疑問を呈した。
「試合が競ればマラトが勝つ」とカフェルニコフは言う。
「奴は前のデビスカップの2試合、メンタル面で崩れなかったから勝ったんだ」

 カフェルニコフは今週末の準決勝が行なわれるセンターコートの状態に関して、擦り切れていて、でこぼこで、バウンドがまったく一定でないと激しく不満を示した。

 しかしジンバブウェのブラック兄弟に「完璧な」コートで恥をかかされたミルジューラの悪夢がいまだ脳裏から消え去らないオーストラリアは、今回の対戦に用いられるANZのサーフェスをずっと丹念に手入れしてきた。
 オーストラリアテニス協会のターフコンサルタント、マーレイ・マクファーレンは、コートサーフェスを「クリケットのテストマッチのウィケットと同じぐらい重要なもの」とみなして、先月ボールのバウンドの高さを2フィート以上も低くしている。

 今週初めてコートを視察したあと、ロシアチームのシャミル・タルピシェフ監督はさっそく口撃の火ぶたを切り、このサーフェスはテニスよりもラグビーがお似合いだと批判した。「芝がすっかり擦り切れているから、本当にコートがでこぼこだ」

 カフェルニコフも監督の不満に同調したが、雰囲気とスタンドのコートへの近さは試合をエキサイティングなものにするだろうとも話した。

「ひどい状態だね」とカフェルニコフは言い、もともとパット・ラフターとマーク・フィリポーシスのゲームに合うように作られていたコートが故障による二人の離脱を受けて作り直されたことをほのめかした。

「ま、できるだけのことはしたんだろうけどね」とカフェルニコフは付け加えたが、このコートがオーストラリアのサーブ&ボレーのゲームに合うように調整されていると思っていることは明らかだった。

 オーストラリアの選手はこの芝のサーフェスを高く評価しているが、という反論に、カフェルニコフはにっこり笑って答えた。「そりゃ自分のところのコートを批判はできないだろう」



Kafelnikov sets sparks flying before Davis Cup semi
By Julian Linden
BRISBANE, Sept 23 (Reuters)

カフェルニコフ、デビスカップ準決勝前に火花を散らせる


 今週末のデビスカップ準決勝に先立って、世界第2位のエフゲニー・カフェルニコフはこの木曜に早くも舌戦を開始し、オーストラリア・チームとそのコート選択を攻撃した。

 対戦前日、カフェルニコフは図々しくもロシアの3−1勝利を予言し、ANZスタジアムのコートを馬鹿にしたように「ラグビー・グラウンド」と称した。

 パット・ラフターとマーク・フィリポーシスという2人のトップ選手を故障で欠くオーストラリアは、今回のシングルスを18歳のレイトン・ヒューイットとデ杯初登場のウェイン・アーサーズに頼っている。

 全豪王者のカフェルニコフは、プレッシャーのかかる試合でのアーサーズの経験不足をさっそく槍玉に挙げ、金曜の第1シングルスで容易にアーサーズを破ってみせると宣言した。
「ウェインは俺をちょっとのあいだ手こずらせるかもしれないが、奴が5セットマッチをずっと安定して戦えるとは思えない」とカフェルニコフ。
「ウェインは何度かトップ選手にも勝ってるが、個人のトーナメントには国を代表して戦うときほどのプレッシャーがない。とくに初めてだったら――たいへんなプレッシャーだぜ」

 カフェルニコフは日曜の入れ替えシングルスでヒューイットに勝つことにもたいへんな自信を示し、もしロシアが金曜のシングルスで2勝していれば土曜日のアンドレイ・オルホフスキーとのダブルスは回避してもいいとさえ言う。
「要するに、もし明日が終わって1−1だったらオーストラリアは泣いて喜べるってことさ」

 しかしオーストラリアのジョン・ニューカム監督は、心理戦においてはカフェルニコフより一枚上手だった。
「彼の(コートについての)発言には驚いたよ。私は何度もウィンブルドンの2週目でプレーしてきたが、あの(ブリスベーンの)コートはそれとほとんど変わらないのだから」
「……しかしエフゲニーは知らないのだろうね。彼はあまり2週目まで進んだことがないから」

 ニューカムの反撃は両陣営のあいだの雰囲気を如実に表していた。どちらのチームも今回のデビスカップ100周年の優勝を死ぬほど欲しがっており、心理的優位に立つためなら何でもする気になっている。

 とくにオーストラリアは失地回復をめざしている。オーストラリアはデビスカップで過去26回優勝しているが、1986年からは優勝がない。ロシアはこの10年間に2度ファイナルまで進みながら、まだ一度も優勝は果たしていない。

 7月の準々決勝でアメリカを破ったオーストラリアは今回の準決勝でも本命とみなされるはずだったが、主力選手の故障でチームのプランは完全に崩れた。

 フィリポーシスはウィンブルドン制覇の夢を打ち砕いた膝の故障からまだ回復していない。一方、ラフターは肩の故障によって1997年と98年に優勝した全米オープンの1回戦で棄権を余儀なくされ、やはり完治を待っているところである。

 2人の不在により、オーストラリアはシングルスを生意気盛りのティーンエイジャーのヒューイットとベテラン職人のアーサーズに、ダブルスをマーク・ウッドフォードとサンドン・ストールに頼るしかなくなっている。

 7月に自身唯一のデビスカップの試合でアメリカのトッド・マーティンとアレックス・オブライエンを破り、最高に自信をつけているヒューイットは、突然オーストラリアの第1シングルスの役割を負わされることになったプレッシャーにも不安は感じていないという。
「こういうことは前にも経験しているし、その経験から学んでいるから、たいして心配してないよ」とヒューイット。

 一方、アーサーズは今回デビスカップに28歳にしてデビューし、このような重要な対戦を任されることに多少の不安を感じていると認めた。彼の父親のデレク・アーサーズは、アデレードに移住してくる前にアイルランドの代表として1962年から65年までデ杯選手を務めている。息子のウェインがテニスの国際舞台で存在を示したのはようやく今年になってからで、先のウィンブルドンでベスト16まで進出し、のちのファイナリストのアンドレ・アガシから1セットを奪ったが、結局4セットで敗れている。

 ニューカムはロシアの第2シングルスを務める急成長中のティーンエイジャー、マラト・サフィンの芝での弱さを指摘した。サフィンは金曜日の第1試合でヒューイットと対戦し、それから日曜の入れ替えシングルスでアーサーズと対戦するが、それが決定戦となる可能性はかなり高い。
「カフェルニコフがグランドスラムを2勝している素晴らしい選手であることはわれわれも知っているが、サフィンに2勝することはできるはずだと思う」とニューカムは言う。
「もしレイトンが初戦でサフィンに勝てば、エフゲニーは大きなプレッシャーを抱えることになるだろう。彼が勝たなければロシアは2−0の後れを取るのだから」

 

原文


第1日



KING ARTHURS DOES IT AGAIN
By Wayne Heming and Michael Crutcher
BRISBANE, Sept 24 AAP

キング・アーサーズ、またも活躍


 オーストラリアの秘密兵器ウェイン・アーサーズは、無名選手からヒーローへの躍進を今日も継続した。ブリスベーンのANZスタジアムのグラスコートで、ロシアのエースのエフゲニー・カフェルニコフを吹っ飛ばしたのである。

 28歳の新人アーサーズと18歳のエネルギッシュなレイトン・ヒューイットというオーストラリアの珍妙なコンビは、デビスカップ準決勝の初日の試合にそれぞれ4セットで勝利し、2−0リードという意外な結果をホームチームにもたらした。

 つい4ヶ月前まで国内でもほとんど知られていなかったアーサーズは、家族も含めた満員の大観衆の声援を受けて波に乗り、カフェルニコフをすごすごと敗退させた。ビジターのロシアにとってはまさに最悪の日となった。

 アーサーズが6−2、6−7、6−2、6−0で世界ランク2位を降した前には、ヒューイットが計算どおりに7−6(7−0)、6−2、4−6、6−3で、安定性に欠けるティーンエイジャーのマラト・サフィンを破っていた。これにより、オーストラリアは早くも3日間の対戦に王手をかけた。

 7月のウィンブルドンで4回戦進出を果たした遅咲きのアーサーズは、「まちがいなく人生最高の瞬間だ――ウィンブルドンよりずっと嬉しい」と喜びを語った。「観客がめちゃくちゃ応援してくれて、ものすごく気合が入った。ふつうならこんなに気合は入らない。最高の気分だった。本当に信じられない――何て言っていいかわからないよ」

 勝利後のコートサイド・インタビューで、アーサーズは熱い舌戦をさらに盛り上げるかのようにこう言った。「今日の僕らに比べたら、彼らは全然たいしたことない選手に見えただろ」

 それに先立って、サフィンは自分のひどい出来に動揺するあまりテニスをやめることを考えるとまでほのめかし、自分をネズミやサルやアマチュアにたとえて痛恨の敗戦を表現した。
「これまでの人生で最低の試合だ。悲惨きわまりない」
「第1セットのあと、もう絶対に勝てないとわかった」
「初めてコートに連れてこられたサルのような気分だった。自信はゼロ、サーブもダメでベースラインでもダメ。数日後にはテニスをやめるかも」

 ヒューイットはコート上ではまったく容赦なかったが、途中でフラストレーションを爆発させたサフィンに多少の同情を示した。サフィンは第3セットでボールをスタンドの2階に打ちこみ、コードバイオレーションをとられている。
「彼は調子のいい日には誰にだって勝てるんだけど、そうじゃないときはATPツアーで最低の負け方をすることもある」とヒューイット。「何よりも、彼は芝での自信を全然もってない」

 アーサーズも満員のスタンドにボールを打ち上げたが、それは意外な勝利に大喜びしてのことだった。
 この30年にデビューしたデ杯選手の中で最も年長のアーサーズは、左腕から放たれる強烈なサーブで敵を動揺させ、最終的には苛立つカフェルニコフを32本のエースで抹殺した。

 ブリスベーンの観衆は、地元の英雄パット・ラフターとビクトリア州出身のマーク・フィリポーシスがともに故障で出場できなくなったために今月初めにいきなりチームに召集されたアーサーズをそろって後押しした。

 アーサーズはカフェルニコフから砲火の洗礼を受けるものと予想されていた。今週いっぱい、カフェルニコフは何度もアーサーズを愚弄する言葉を吐き、彼がデビスカップの大舞台で自分に対抗できるわけがないと言っていたのである。

 だが、退避壕を探すことになったのはカフェルニコフのほうだった。アーサーズはつぎつぎとビッグサーブを打ちこみ、最終セットでは巧妙なサーブ&ボレーで完全に試合を支配した。

 この敗北にも、カフェルニコフの毒舌は止まらなかった。彼はオーストラリアの勝利の正当性をいささかも認めず、ふたたびサーフェスにけちをつけた。
「ジャガイモ畑で100パーセントの力が出せるか」とカフェルニコフは毒づいた。
「このコートは許しがたい」
「ひどいバウンドなんだからサーブを返せるわけがない」
「別の状況、別のサーフェスでぜひウェインとやらせてもらいたいね。それで奴が俺に勝ったら、そのときは素晴らしいって言ってやるよ」

 アーサーズはまったく冷静さを失わず、勝敗はすでに今日の午前3時の段階で決まっていたのかもしれないと話した。そのときブリスベーンのホテルで眠っていたアーサーズは、ふと耳にジョン・ニューカム監督の声が響いてきて目が覚めたという。
「そうしたらプレッシャーが消えてなくなった。冷たい汗をかいて起きたんだけれど、『恐怖に打ち負かされるな』っていうニュークの声がはっきり聞こえたんだ」とアーサーズは明かした。
「昨日は本当に緊張していて、サーブをコートの近くにも入れられなかったんだが、今朝起きたときにはすっかりリラックスできていて、昨日とはまるで別人のように感じた。それが今日の大きな勝因だったと思う」

 

原文


第2日



Russians keep Davis Cup semi alive
By Julian Linden
BRISBANE, Sept 25 (Reuters)

ロシア、デ杯準決勝を最終日まで持ち越す


 ロシアのエフゲニー・カフェルニコフとアンドレイ・オルホフスキーは土曜日のダブルスでオーストラリアのサンドン・ストールとマーク・ウッドフォードを6−1、6−4、4−6、4−6、8−6で降し、オーストラリアのリードを2−1に縮めて勝敗を最終日に持ち越した。

 金曜のシングルスでカフェルニコフとマラト・サフィンがともに負けていたため、ロシアにとってはこのダブルスで勝つことが必須だった。ブリスベーンのANZスタジアムで行なわれた手に汗握る試合の中、ロシアのペアは勇気あるプレーで応え、みごとに番狂わせを演じてみせた。

「とりあえず勝負を持ち越せたんでよかった」と全豪王者のカフェルニコフは語った。「昨日の出来は俺の全キャリアの中でも最低だったが、もう立ち直ったと思う」

 自分の能力をまちがっても過小評価しない世界ランク2位は、日曜の入れ替えシングルスで自分がアデレード出身のティーン・エイジャー、レイトン・ヒューイットを完璧に打ち負かすと言い切り、あとはサフィンとウェイン・アーサーズによる最終戦の結果に任せると話した。
「奴(ヒューイット)にレッスンを授けてやるよ。奴は痛い思いをして学ぶことだろう」
「明日の試合、俺はまちがいなく勝つから、マラトにヒーローになるチャンスをくれてやるよ」

 たしかにヒューイットとアーサーズは、オーストラリアのトップ2であるパット・ラフターとマーク・フィリポーシスが故障で出られなくなったために急きょデ杯チームに召集されたメンバーである。しかしオーストラリアのジョン・ニューカム監督は、カフェルニコフの大胆な予言を空威張りと切り捨て、自分の選手は任に堪えると反論した。
「そんなに大口を叩きたいんなら、実行できるようにしたほうがいいね」とニューカムは言う。
「レイトンはこういう状況に対処するのが非常にうまいようだし、プレッシャーがより多くかかるのはレイトンよりカフェルニコフのほうだと思うがね」

 カフェルニコフが金曜のアーサーズ戦で負けたあとに「ジャガイモ畑」と称した芝のコートで、ロシアのペアは最初の2セットを楽々と奪い、圧倒的にリードを広げた。

 ロシアは第1セットでオーストラリアのサービスゲームを3回破り、第2セットでも第10ゲームをブレークして、満員の観衆を沈黙させた。

 しかしオーストラリアはすぐに反撃を開始した。第3セットに入り、シリル・スークと組んで昨年の全米オープンのダブルスで優勝したストールは、バックハンドのダウンザラインのウィナーを放ってカフェルニコフのサービスゲームをブレークした。

 愛国的なファンの猛烈な応援に後押しされて、オーストラリアのペアは試合を最終セットまで持ちこんだ。すでにウィンブルドン5つを含め、グランドスラムで9つのダブルスタイトルを手にしているウッドフォードは、第4セットのオルホフスキーのサービスゲームでロシア側のエラーを誘い、ついにブレークした。

 にわかに勢いはオーストラリアに傾いた。ロシアは自分たちのサービスゲームで何度もブレークポイントをしのがねばならなかったが、ついに第14ゲームでウッドフォードのサービスをブレークし、3時間16分の熱戦を制した。

「非常に残念だが、この敗北を受け入れなければならない」とウッドフォードは語った。「よく反撃したとは思うが、2セットダウンから巻き返すのはやはり難しい」

「今日で決められていたら最高だったが」とニューカムも認めた。「しかしそれでもまだリードしているし、われわれが優位なことには変わりない」

 

原文


第3日



Hewitt, Arthurs lift Aussies to Davis Cup final
By Julian Linden
BRISBANE, Sept 26 (Reuters)

ヒューイットとアーサーズ、オーストラリアをデ杯決勝へ導く


 デ杯準決勝最終日の日曜、オーストラリアはシングルスで2勝し、4−1でロシアを降して6年ぶりの決勝進出を決めた。決勝の相手はフランス。

 パット・ラフターとマーク・フィリポーシスの欠場により即席チームで臨んだオーストラリアは、人材不足のホームチームを叩きつぶすと豪語していたロシアチームに完勝した。

「われわれが出した選手を考えると、これは誰もが誇りにしていい素晴らしい結果だ」とオーストラリアのジョン・ニューカム監督は語った。「あとはフランスに行ってデビスカップを持ち帰るだけだ」

 オーストラリアのヒーローは、またしてもティーンエイジャーのレイトン・ヒューイットと、28歳にして初めてデビスカップに登場したベテランのサーブ&ボレーヤー、ウェイン・アーサーズだった。

 ヒューイットは世界ランク2位のエフゲニー・カフェルニコフに6−4、7−5、6−2で完勝し、オーストラリアの小僧にレッスンを授けてやると言っていたロシア人に冷水を浴びせた。そして消化試合となった次の第5戦では、アーサーズがマラト・サフィンを6−3、6−2で降した。

 弱冠18歳ですでに世界ランク31位につけているヒューイットは、自らの情けない敗戦によってロシアチームの決勝進出の望みを絶たせておきながら相手への賞賛をまったく示さなかったカフェルニコフのスポーツマンシップのなさを非難した。
「彼は今週ずっと大口を叩いてた」とヒューイット。「僕にレッスンを授けてやるってみんなの前で言ってたけれど、もし学ぶべき教えがあるとするなら、彼こそ口を閉じていられるようにするべきだってことさ。彼がいかに最低の敗者か、これではっきりわかるってもんだ」

 カフェルニコフは金曜のシングルスで89位もランクが下のアーサーズに敗れたあと、ブリスベーンのANZスタジアムのグラスコートを「ジャガイモ畑」と称してオーストラリア人を激怒させた。

 日曜にストレートセットでヒューイットに敗れたあとも、カフェルニコフはまったく懲りる様子がなく、今日はたまたま自分の調子が悪かっただけでヒューイットには高いレベルで競い合えるだけの力はないと酷評した。
「奴のプレーにはちっとも感銘を受けなかったね」とカフェルニコフ。
「あいつにはたいした腕はない。今日は運がよかっただけだ。あいつにあるのはファイティングスピリットだけ」

 ニューカムは記者会見で、ロシアチームの他のメンバーも実はカフェルニコフの発言に怒っていることを明かした。
「誰がガッツをもっていて誰がもっていないか、これでわかったんじゃないかと思うね」
「ああやって必死に虚勢を張っているが、彼はけっこうもろいってこと」

 2−1とリードされて最終日を迎えたロシアにとってはヒューイット戦に勝つことが必須だったが、カフェルニコフは試合が始まってすぐに窮地に立たされた。ポニーテールのオーストラリアの若者に4ゲーム連取されたのち、カフェルニコフはやっとスコアボードに数字を載せた。

 ヒューイットは第8ゲームをブレークされてセット先取の最初のチャンスを逃したが、2度目のチャンスとなったサービスゲームでは、0−40からしっかり挽回してセットを取った。

 カフェルニコフは第2セットに入ってから調子を上げ、いったんは5−2と大きく引き離したが、その後ヒューイットに5ゲーム連取を許して1セットオールにするチャンスをふいにした。

 これで戦意を喪失したのか、カフェルニコフは第3セットの最初のサービスゲームをいきなり落とし、第7ゲームを18個目のダブルフォルトでふたたび落とした。ヒューイットは1万2000人の観衆の前でオーストラリアの勝利を決めた。

 消化試合となった第5戦では、アイルランドのデ杯選手だったデレクを父に持つアーサーズがサフィンを破り、記念すべきシーズンを締めくくった。これまでずっとサテライトを中心に回っていたレフティはほとんど無名に近かったが、今年のウィンブルドンで4回戦に進出して現在世界ランク1位のアンドレ・アガシに惜しくも敗れ、一躍その名を知らしめた。

 アーサーズの豪速サーブと鋭いボレーはアガシを感嘆させ、オーストラリアは彼をデ杯代表に選ぶべきだとまで言わしめていた。ニューカムも、アーサーズにはテニスの最も栄誉ある個人大会で優勝できる力があると認めている。「ウェインはウィンブルドンで優勝できると心から思うよ。来年はまだ無理かもしれないが、その次なら不可能じゃない。彼は非常に成熟した選手だし、まじめに優勝を狙えるよ」



AUSSIES SLAM "LOUSY LOSER" KAFELNIKOV AFTER CUP SEMI WIN
By Wayne Heming and Michael Crutcher
BRISBANE, Sept 26 AAP

オーストラリア、デ杯準決勝で「最低の敗者」カフェルニコフを叩く


 怒れるオーストラリアチームは今日のデ杯最終日で決定的な4−1勝利を収め、大口叩きのロシアのエフゲニー・カフェルニコフを容赦なく退散させた。

 デ杯チームのオレンジボーイから正選手へと急成長したアデレード出身のティーンエイジャー、レイトン・ヒューイットは、ANZスタジアムで行なわれた準決勝最終日のシングルス第1戦で世界ランク2位のカフェルニコフに6−4、7−5、6−2で圧勝し、完璧な週末を締めくくった。

 この勝利によってオーストラリアは6年ぶりの決勝進出が決まったが、同時に監督のジョン・ニューカムは次回の選手選抜に頭を痛めることとなった。

 フランスとの決勝戦は12月3−5日にフランスで行なわれる。故障からの回復が間に合えばパット・ラフターが主力になるのは当然としても、ヒューイットと故障中のマーク・フィリポーシスのどちらを第2シングルスに選ぶかは悩ましいところだ。

 しかも、闘志あふれるヒューイットが今日の完勝で「これまでの人生で最高の瞬間」を祝ったあととなっては、デ杯4戦全勝の彼をそう簡単には除外できない。

 ヒューイットは今週カフェルニコフにさんざん暴言を吐かれてもずっと黙っていたが、今日のシングルスで「レッスン」を授けてやるというロシア人の発言には闘志をかきたてられていたと認めた。
「そりゃそうだよ」とヒューイットは言ってオーストラリアの応援団から大喝采を浴びた。
「今日はぜひとも彼をやっつけたかった」
「今週ずっと僕たちをこてんぱんに負かすって大口を叩いてた奴を負かしたんだから、もう最高だよ」

 故障中のオーストラリアのエース、ラフターも、今日は舌戦に参加してカフェルニコフを「臆病者」でスポーツマンらしくないと言い切った。
「ネットを飛び越えてコートに出て行って彼にビッグサーブを見舞ってやりたいと何度思ったことか」とラフター。
「彼は失礼だよ。ロシアのチームメイトに対してだけでなく、テニスというスポーツに対してもね。彼は悪い見本を示したけど、誰も聞いちゃいない」

 しかしストレートセットでの敗北を喫しながら、カフェルニコフはなおも捨て台詞を忘れず、この3日間の試合のあいだに彼のラケットから叩き出されたショットよりもよほどパンチのある毒舌を吐いた。
「奴は若くて熱意もあるが、奴のゲームには感銘を受けないね」とカフェルニコフはヒューイットについて語った。
「奴はちっとも自分からゲームを支配しようとしない。サーブもごく普通。今日は運がよかった。それだけさ」

 しかしヒューイットも負けていない。ブリスベーンの満員の観衆が仮設スタンドを歓喜で揺らしているあいだ、カフェルニコフとの握手を一瞬で済ませたことについて聞かれてヒューイットはこう答えた。
「彼には挨拶もしたくなかった」
「彼がいかに最低の敗者かわかるってもんだ。彼こそレッスンを受けたと思うな――とにかく僕は彼から何のレッスンも受けなかったからね」
「彼にいくらレッスン料を払えばいいのか悩んでたんだけどなー」とヒューイットは言って、からかうように自分の財布から50ドル札を2枚取り出してみせた。

 消化試合となった最後の第5戦では、わずか49分でウェイン・アーサーズがロシアのティーンエイジャー、マラト・サフィンを6−3、6−2と粉砕し、オーストラリアの4−1勝利を完結させた。結局、ビジターのロシアにとっては最悪の週末となり、マラソンマッチとなった昨日のダブルスでの1勝しか挙げられなかった。

 オーストラリア代表として申し分のないデビューを果たしたアーサーズだが、決勝ではシングルスに出られない可能性がある。もう一つの準決勝でフランスがベルギーを破ったため、決勝はボルドーかニースの遅いクレーサーフェスで行なわれると予想されるが、肩の故障からの回復が間に合えばラフターがメンバー入りするのは確実だろう。

 ニューカムは決勝でのチーム編成について現時点では未定だとしている。ラフターもフィリポーシスも、それぞれ全米オープンでの活躍を阻まれた故障からまだ完全には回復していない。

 一方、ニューカムはカフェルニコフ問題に関しては攻撃を辞さず、第2セットでの5−2のリードをふいにして7ゲームを連続で落とした全豪チャンプの気概に疑問を呈した。
「ああやって必死に虚勢を張っているが、彼はけっこうもろいってことが今日はっきり見えたと思うね」とニューカム。
「ロシアチームの何人かがやってきて私に言ったよ。彼の発言にわれわれが同意しているとは思わないでほしいと」
「彼は(この週末のあいだに)2つの5セットマッチで1セットしか取ってない」
「完全に尻を叩かれたね。今日のプレーも同じこと」

 ヒューイットは絶好調で第3セットに入り、疲労の見えるカフェルニコフを最初のゲームでブレークすると、第7ゲームでもふたたびブレークして、2時間21分の試合の勝利を射程内に収めた。

 最後のサービスゲームを危なげなく取ると、ヒューイットは大喜びでラケットを高く放り投げ、その場で飛び上がってからニューカムとチームメートのもとに駆け寄った。

 

原文


訳者あとがき

ジェーニャ最高。 I really miss you.
ポーカーでもがんばってくれ。

ちなみに、その後の2人の関係はいたって良好だった模様。